2時間研修と90秒動画をどう比べた?
オンライン研修、自然な接触動画、質問票を組み合わせた研究設計と、対照群がない限界を整理します。

導入会話
マロン学長「研修で変わったって、テスト用の動きを覚えただけじゃないの?」
いち教授「その可能性も考えながら、動画をいつ撮り、誰がどう評価したかを確かめよう。」
この回でわかること
- 2時間研修で扱った内容
- 90秒動画と質問票の役割
- 前後比較だけでは分けられない影響
普段の接し方を90秒撮影した
参加者は、自分の飼い猫か、Cats Protectionで普段関わる猫を選び、いつもの飼育や交流の中で90秒の動画を撮りました。特定の触り方を演じるようには指示されていません。
同じ猫を3時点で撮るよう求められましたが、研究は決まった猫の集団を追跡していません。猫の年齢、性別、品種、保護歴も集めていないため、猫側の違いを細かく調整できません。
質問票を先に読むと、その内容を意識して接し方が変わる可能性があります。そこで毎回、動画を先に撮り、その後に態度・実践の質問票へ答える順番でした。
参加した47人
参加条件は18歳以上でCats Protectionの現役の職員またはボランティアであることで、猫の直接ケアを担当していない人も参加できました。内部の告知に自ら応募した人たちです。47人のうち職員が25人(53.2%)、ボランティアが22人(46.8%)。勤務・活動期間は0〜12か月が最も多く14人、年齢は36〜45歳が最も多く16人でした。女性が44人(93.6%)を占め、過去にCats Protectionの猫の扱いに関する研修を受けた人は11人(23.4%)でしたが、その研修にCAT指針は含まれていませんでした。
質問票は研究者が作った45項目で、態度15項目と実践30項目から成ります。曖昧な4項目を解析前に外し、内的な一貫性は態度でα=0.68、実践でα=0.88と報告されています。研究はWrexham Universityの倫理委員会の承認を受け、参加者は自分と猫の安全を優先して、必要ならいつでも撮影を中止できました。
研修はオンラインで2時間
1回の研修は最大15人で、Microsoft Teamsを使って行われました。猫中心の接し方を話し合い、CAT指針を施設で使う様子を動画で確認しました。
- Choice:猫が関わるか、離れるかを選べるようにする
- Attention:姿勢や行動の変化を見て、人の行動を変える
- Touch:主に頭の側面へ短く触れ、およそ3秒で止まる
ここでの接触は、日常の社会的なふれあいです。診察、爪切り、投薬、保定の手順を検証した研究ではありません。
評価者は時点を知らずに動画を見た
動画は、猫行動・福祉の研究者2人が評価しました。研修前か研修後かを伏せ、人の行動がCAT指針へ「沿わない」「ある程度沿う」「よく沿う」のどれかをつけました。
20本の動画は2人が別々に評価し、評価の一致度を確認しています。ただし3段階はCATへの適合度で、猫の気持ちを採点したものではありません。
研修なし群がない
全参加者が研修を受け、研修前から研修後へ進みました。研修を受けない別の集団はありません。
そのため、変化には研修だけでなく、撮影を繰り返したこと、研究へ参加している意識、質問票を繰り返し読んだこと、時間の経過が関わった可能性もあります。
研究は研修後に変化が見られたことを示しますが、観察された変化のすべてを2時間研修だけの効果と確定する設計ではありません。
今日からできること
- 猫と接する自分を一度だけ短く撮り、猫ではなく自分の動きを見る
- 猫が離れた時に追っていないか、手を止める間があるかを確認する
- 撮影で猫が警戒するなら無理に続けず、日常の記憶を一行書く
まとめ会話
マロン学長「動画で実際の行動を見たのは強みだけど、研修だけが原因とは決められないんだね。」
いち教授「その通り。研究の工夫と、残る限界を両方持って読むのが大切だよ。」
次回予告
Choice・Attention・Touchを、固定された「正解の撫で方」にしない読み方を考えます。
参考文献
Hatam EV, et al. (2026). Frontiers in Veterinary Science, 13, 1880180. https://doi.org/10.3389/fvets.2026.1880180