「3匹以上でOR 6.42」を上限にしない
補正後に残った報告オッズ6.42を、発症率や3匹の安全上限へ変えずに読みます。

導入会話
マロン学長「OR 6.42なら、3匹目から急に危ないの?」
いち教授「発症率でも安全上限でもないよ。何と何を比べた数字か、順に見よう。」
この回でわかること
- 補正後に残った頭数との関連は一つだけだったこと
- オッズ比の読み方
- 3匹以上群という区分の中身
補正後に残ったのは膀胱炎だけ
Bonferroni補正後、頭数との関連で残ったのは、単頭世帯に対する3匹以上世帯の膀胱炎報告オッズ6.42でした。獣医師の診断ではなく、「半年に1回以上」とした飼い主報告です。
未補正の水準まで広げると、3匹以上世帯では嘔吐、下痢、便秘も単頭より多く報告され、2匹世帯では膀胱炎、トイレ以外での排泄、尿スプレーがやや多く、注意要求は少なめでした。しかしこれらは補正後には残らない、探索的な関連です。著者らは、補正後だけを見れば頭数と福祉の多変量の関連は膀胱炎の一つだけになる、とはっきり書いています。
オッズ比は「何倍なりやすい」ではない
オッズ比は、ある結果が「起きた数と起きなかった数の比」を、二つの群の間で比べた値です。発症率が6.42倍という意味ではなく、単頭世帯に比べて3匹以上世帯で膀胱炎の報告の偏りが大きかった、と読みます。もとの報告割合が小さい時、オッズ比はリスクの差より大きく見えることがあります。
マロン学長「6倍って聞くと、ものすごく増えた気がしちゃう。」
いち教授「そう感じやすい数字なんだ。何人中何人が、という元の割合と一緒に見る必要があるよ。」
3匹以上群には、いろいろな家庭が混ざる
3匹以上群には3匹より多い家庭も含まれます。分析対象1,714匹のうち3匹以上世帯の猫は161匹、9.4%で、他の群より少数です。この群では2歳未満の若い猫が多く、避妊・去勢していない猫の割合も高めでした。
同じ猫を2匹から3匹へ増やす前後で追った研究ではなく、群の構成や測っていない住環境も違います。著者らは、家の広さや部屋数と頭数の比、いわば「社会的な密度」も関わり得ると考察していますが、この研究では測っていません。
頭数と性格の軸の関係も見ておきます。「控えめ・怖がり」の平均は単頭3.18、2匹3.24、3匹以上3.28、「無関心・不活発」は3.21、3.22、3.41で、どちらも頭数による有意差はありませんでした。多頭飼いの猫が性格として大きく違っていたわけではない、ということです。
先行研究とも一致と不一致がある
多頭飼いで猫の下部尿路の病気が増えるという1997年の報告とは方向が合いますが、2006年の研究では頭数と膀胱炎に関連がありませんでした。著者らは、先行研究が「多頭」を細かく分けなかったために、3匹以上で見えるパターンを見落としたのかもしれない、と考えています。この研究でも単頭と2匹の間には差がなく、3匹以上で差が出ています。
家庭で3匹目を迎えるかを考える時、この数字は「3匹はだめ」とも「3匹まで安全」とも読めません。使えるのは、多頭になった時に排尿の回数や様子、トイレ以外での排泄といった膀胱炎に関わる変化を、猫ごとに見ておく理由がある、という程度です。
OR 6.42を発症率、リスク比、3匹目の境界線へ変換しません。
今日からできること
- オッズ比の基準群と結果の定義を見る
- 補正後に残ったか確認する
- 家庭の変化を猫ごとの時系列で記録する
まとめ会話
マロン学長「頭数で確かに残ったのは膀胱炎の一つだけで、それも上限を決める数字じゃないんだね。」
いち教授「その通り。次は、頭数より広く福祉と関連していた要因を見よう。」
次回予告
資源数と屋外アクセスの関連が単純でない理由を読みます。