夜だけ室内にすると遠出は減る?——75%の読み方
外出制限なし群とあり群のGPS指標の違いを、非無作為の比較として読みます。

導入会話
マロン学長「制限なく外に出る猫の行動圏が75%広いって、夜だけ室内にすれば75%縮むってこと?」
いち教授「そこは慎重に。違う暮らし方をしていた猫同士を比べた数字で、同じ猫の前後を比べた効果ではないんだ。」
この回でわかること
- 外出制限なし群とあり群の違い
- 75%、46%、31%が何の指標か
- 観察的な関連を因果と区別する方法
外出の管理が違う二つの群
72匹のうち、59匹は屋外へ制限なく出られ、13匹には制限がありました。制限は主に夜間の屋内滞在ですが、何時から何時まで、どのような方法で制限したかは家庭ごとに違います。
研究者は年齢、性、農村・都市などを考慮したモデルで、群間の移動指標を比べました。制限なし群の行動圏は、制限あり群の1.75倍(95%信頼区間1.05〜2.91)でした。家からの1日最大距離は1.46倍(1.09〜1.94)、1日総移動距離は1.31倍(1.09〜1.56)です。
75%は行動圏、46%は家からの日最大距離、31%は日総移動距離の群間差です。三つをまとめて「遠出が75%減る」とは言えません。
なぜ「夜だけ」なのか
著者らが導入部で整理しているように、完全な室内飼いは野生動物への捕食と猫の屋外での危険をなくしますが、自然な行動を妨げると感じる飼い主もいて、受け止め方は社会によって違います。部分的な制限は受け入れられやすく、夜間の制限は夜に活動する哺乳類を守り、暖かい季節の夜や薄明薄暮の制限は活動中・繁殖期の野生動物に利益があると論じられてきました。ただし、猫が夜に遠くへ行くという研究もあれば、昼夜の差を認めない研究もあり、夜間屋内と自由外出で行動圏に差がなかったという過去の研究もあります。この研究の結果は、その議論に一つの観察を加えたものです。
因果を確かめる実験ではない
外出制限の有無は研究者が無作為に割り当てていません。もともと管理が違う家庭を比べています。猫の性格、周辺環境、飼い主の選択など、測り切れない違いが結果に関わった可能性があります。制限あり群も13匹と小さく、信頼区間は広いままです。
マロン学長「違いが見つかったことと、『制限したからその分だけ縮んだ』は別なんだね。」
この論文は、外出管理を考える材料になります。ただし「何時から室内にするのが最適か」「屋内化した時の猫の福祉はどうか」「事故が何%減るか」は測っていません。猫がすでに外へ出る生活に慣れているなら、環境や慣れ方も別の情報で考える必要があります。
持ち帰った獲物の数とは関係がなかった
行動圏の広さと獲物を持ち帰る数の関係も調べられました。どの猫が持ち帰ったか特定できた34匹では、行動圏、屋外アクセス、年齢、居住地のいずれも持ち帰り数に強い関連を示しませんでした。著者らは、猫が歩き回るのは狩りのためだけではなく、狩り以外の行動の必要を満たすためでもあるのかもしれない、と論じています。広く歩く猫ほど多く狩る、という単純な図式は、この標本では支えられませんでした。
今日からできること
- 制限の効果を考える時は、猫の性格や環境の違いも一緒に見る
- 「75%減る」を自分の猫への保証にしない
まとめ会話
いち教授「関連の強さを正確に読めば、研究を生活へ生かしやすくなるよ。」
マロン学長「一匹への効果を約束する数字にはしないね。」
次回予告
鈴や遊びなど、狩り対策の介入がGPSの移動にも変化を出したかを見ます。
参考文献
Cecchetti M, et al. (2022). Conservation Science and Practice, 4(2), e597. https://doi.org/10.1111/csp2.597