初対面の保護猫との5分間、何を見た?
参加者119人・猫100匹・558動画という分母と、分析対象を選んだ条件を確認します。

導入会話
マロン学長「実際の触り方は、どうやって比べたの?」
いち教授「マロン、動画の数だけでなく、どんな動画が分析に残ったかも見ておこう。」
この回でわかること
- 参加者・猫・動画の数は別の分母
- 初対面の5分間という観察条件
- 接近しない猫の場面が入りにくい理由
人119人、猫100匹を分析
2020年1〜3月、英国の保護施設で120人が参加しました。質問票が未完了の1人を除き、分析対象は119人です。参加者の約90%は女性、57%は当時猫と暮らし、41%は動物に関わる仕事またはボランティア経験がありました。一般の飼い主を無作為に選んだ標本ではありません。
猫の記録は114匹から、研究条件に合わない14匹を除いた100匹。人に比較的慣れた、主として避妊去勢済みの成猫の保護猫でした。強いストレスや攻撃性のある猫は対象に含めませんでした。どんな猫にでも同じ結果が出ると考えないことが大切です。
参加者はSNSで便宜的に募集され、科学研究で猫と接することを知らされていました。施設に来ている譲渡希望者そのものを募ると、審査に有利な振る舞いを見せようとする可能性があるため、避けられています。猫に会う前に、年齢区分、性別、現在猫と暮らしているか、動物と関わる仕事やボランティアの有無、猫との嫌な経験、猫と暮らした年数と頭数を答え、猫の行動や体の言葉についての知識を5段階で自己評価しました。性格は44項目の質問票で、協調性、勤勉性、外向性、神経症傾向、開放性の五つを測っています。
猫の側は、施設の職員による人への友好性の確認に加え、質問票で友好性、恐怖、いら立ちやすさが評価されました。猫は約2m×3mの個室に単独で暮らし、研究の前に施設に慣れる時間を与えられています。猫の福祉の専門家と職員が観察し、苦痛や病気の兆候があればすぐに研究から外す体制でした。
一人あたり別の猫3匹、各5分
参加者は椅子に座り、初対面の猫それぞれと5分ずつ過ごしました。猫を抱き上げたり、追いかけたりすることは認められていません。合計558本の動画を記録し、行動を頻度や時間として符号化しました。人によって使用できた動画は1〜3本です。
研究の目的は家庭での飼育技能を試験することではありません。同じ環境で人による接し方の違いを観察しやすくする設計です。人と猫の固定されたペアを長期間追跡したわけでもありません。
参加者は猫の個室に静かに入り、休息場所から離れた入口側の角に座り続け、通常どおり接するよう求められました。猫は接触を避けるために離れることができます。カメラ2台で人の動きを記録し、入口にはカーテンをかけて監視されている印象を弱めました。接触は給餌・清掃・来客の多い時間帯を避け、同じ猫が受ける接触は2日間で最大3回、間隔は1.5時間以上とされました。
「近くにいた場面」に絞られる
分析に使うには、猫が参加者の手の届く範囲に合計150秒以上いる必要がありました。最初から距離を取り続ける猫、人との接触を避ける場面は入りにくくなります。動画で測った触れ方を、接触したくない猫への接し方まで含む全体像として扱えません。
今日からできること
愛猫との場面でも、撫でられた時だけでなく、近づかない・離れる場面を観察に含めてみましょう。触れ合えた瞬間だけを覚えていると、猫の選択を見落とすかもしれません。
まとめ会話
マロン学長「動画が多くても、近づかなかった場面は結果に入りにくいんだね。」
いち教授「うん。次は、その動画の行動をどう整理したかを見よう。」
次回予告
七つの成分と、猫が主導しやすい接し方を学びます。
参考文献
Finka LR, et al. (2022). Scientific Reports, 12, 12128. https://doi.org/10.1038/s41598-022-15194-7