飼育年数・自信・性格と触れ方の関係
人の経験や自己評価と行動成分の関連を、能力評価や原因と混同せずに読みます。

導入会話
マロン学長「結局、長く飼ってきた人ほど猫のペースに合わせられたの?」
いち教授「マロン、この条件ではむしろ逆方向の関連が出た。でも『長く飼うと下手になる』とは言えないよ。」
この回でわかること
- 猫飼育年数と動物関連の経験は別の指標
- 自信と実際の接し方は同一でない
- 観察された関連を原因にしない
飼育年数と猫主導の成分
参加者が猫と暮らした年数が長いほど、猫の接近に応じて過度に触らないPC1の得点は低い関連でした。一方、動物に関わる仕事やボランティア経験がある人では、PC1がやや高い関連でした。同じ「猫に慣れている」という言葉でも、家庭で一緒に暮らした年数と、動物との職業的な接触は違います。
飼育年数が長い人では、人から接触を始めるなどのPC2が高い関連もありました。ただしこれらは平均的な統計上の関連です。個々の人を上手・下手と判定する式ではありません。
自己評価と触れる部位
自分の猫知識や経験への評価が高い人では、比較的好まれやすい緑の部位を触るPC7が強く高い関連でした。同時に、お腹や尾の付け根など赤の部位を触るPC4も弱く高い関連でした。「自信が高いから猫主導の接し方も高い」という単純な結果ではありません。
外向性、協調性、神経症傾向、年齢などとも一部の成分に関連が見られました。たとえば協調性はPC4と負の関連です。ただし性格の特徴から「この人は猫に好かれる」と読むことはできません。研究は人の行動の変動を探索したもので、猫からの好意を測っていません。
年齢では、56〜75歳の群で猫を抱えたり押さえたりするPC5の得点が非常に強く高い関連がありました。神経症傾向もPC5と弱い正の関連です。外向性は、人が接触を始めたり切ったりするPC2の高さと関連していました。一緒に暮らした猫の頭数が多い人では、接触時間の長いPC3が高い一方、同居年数と神経症傾向が高いとPC3は低くなっていました。PC6には意味のある説明変数が見つかりませんでした。
著者らは考察で、猫との同居年数が長い人には、頭から背中、尾へと撫でて手を戻し、また始めるという典型的な撫で方が多いのかもしれない、と論じています。これは猫どうしや猫から人へ始める接触に見られる、頬や口の周り、側頭部への局所的な触れ方とは違います。自己評価が高い人では好まれやすい部位にも避けた方がよい部位にも触れる得点が高く、体の広い範囲に触れる傾向を示すのかもしれない、とも述べています。いずれも解釈であって、仕組みを直接調べたものではありません。
関連の原因は分からない
参加者を経験年数ごとに無作為化したわけではなく、調査は一時点の観察です。経験の内容や、その人が普段暮らす猫との関係、参加動機などが違う可能性があります。複数の説明モデルが近い評価だった部分もあります。経験が接し方を変えた、と原因を断定できません。
今日からできること
「長年飼っているから大丈夫」という前提を一度脇に置き、猫が接触を始めたか、避けられるかを観察してみましょう。これは人を採点するためでなく、目の前の猫を見直すためです。
まとめ会話
マロン学長「自信と経験の数字だけでは、猫のペースに合わせたかは分からないね。」
いち教授「そうだね。最後に、家庭の愛猫にどこまで当てはめられるか確認しよう。」
次回予告
初対面の保護猫から家庭の愛猫へ、結果を移す際の境界線を考えます。
参考文献
Finka LR, et al. (2022). Scientific Reports, 12, 12128. https://doi.org/10.1038/s41598-022-15194-7