保護施設の100匹と、5分×15回の条件
完了猫と除外猫、報酬・毎日の交流・評価方法を分けて研究の条件を見ます。

導入会話
マロン学長「100匹が参加したなら、どんな猫でも同じように学べるの?」
いち教授「マロン、100匹は最後までプログラムを終えた猫の数だよ。研究の入口と出口を分けよう。」
この回でわかること
- 100匹は完了した健康な保護猫
- 練習以外の交流・環境への慣れもあった
- 訓練前は四行動とも100匹を測れたわけではない
対象は健康で譲渡可能な猫
研究はコロラド州の保護施設で、健康で譲渡可能な、生後6か月以上の猫を対象にしました。全頭が避妊去勢済みです。猫たちは同じ建物内にある別の訓練区画へ移り、二週間を過ごしました。プログラムを完了して分析されたのは100匹。別に19匹は、途中で譲渡された、病気になった、必要な練習回数を終えられなかったなどの理由で外れました。
したがって「保護猫100匹すべてが最後までできた」と言うと、完了できなかった猫が見えなくなります。逆に、外れた19匹を「学習できなかった猫」と数えるのも誤りです。譲渡は能力不足ではありません。完了猫の結果は、参加候補すべての成績ではないのです。
一回5分、計15回
猫は金曜に新しい区画へ移り、週末に慣れ、月曜午後から練習を始めました。原則として月曜〜木曜に午前・午後の一日2回、各5分。最初の月曜だけ1回なので、二週間で計15回・合計75分です。二人のトレーナーが時間帯を分担し、猫が落ち着けるかに応じてケージ内や別室などで練習しました。
望む動きが起きたらクリック音を鳴らし、通常は好む食べ物を続けました。最初の食べ物に関心がなければ別のものを試し、少数の猫には、好きな場合に撫でることを報酬に使いました。すべての猫に同じ一種類の報酬を固定したわけではありません。
猫は個別のケージで過ごしました。内寸は約89×69×74cmで、L字の棚、寝具、おもちゃ、段ボール製の爪とぎ、トイレ、食器と水が置かれ、怖がる猫には隠れ箱が用意されました。大きな猫には隣接する二つのケージを連結しています。練習の場所は猫の落ち着きや周囲の状況に応じて、ケージの中、小部屋、施設の主室のいずれかでした。同じ二人のトレーナーが午前と午後を分担して四つの行動を教えました。
練習以外にも人と関わった
各猫には、望まない場合を除き、毎日少なくとも10分の一対一の交流がありました。撫でる、遊ぶなどの内容です。清掃や職員の作業時にはケージ外で過ごす時間もありました。新しい環境と人に慣れる時間も二週間のなかに含まれます。だから得点が変わっても、そのすべてをクリック音の功績とすることはできません。
評価は完成形だけでなく途中の動きも
訓練前後で各行動を5回合図し、0〜3点を付けました。たとえば鼻タッチの3点は鼻が実際に目標へ触れた場合。近づいたけれど触れなければ2点です。3点は合図から2秒以内の完成形で、単に偶然動いたことと分けています。怖がったり位置が合わなかったりして、最初に四行動すべてを評価できない猫もいました。この人数の違いは次回の数字で重要です。
報酬には、訓練前の評価で猫が選んだ食べ物を使いました。鶏肉のベビーフードと缶詰のツナを1分間提示し、選ばれたのはベビーフード38%、ツナ62%でした。どちらも選ばない猫には別の食品を試し、途中で関心を失えば選択肢を変えています。少数の猫は食べ物を望まず、撫でられることを好んだため、それを報酬にしました。これらの食品と量はこの実験の条件であり、家庭への給餌のすすめではありません。
今日からできること
- 研究の割合を見るときは、何匹のうちの割合か、最初と最後で同じ猫を数えたか確認する。
- 猫と何かを試すときは、新しい環境で落ち着いているかを先に観察する。
まとめ会話
マロン学長「練習は短くても、報酬や人との交流、環境に慣れる時間も一緒にあったんだね。」
いち教授「そう。次は、四つの行動で実際に何匹が最高点だったかを見よう。」
次回予告
鼻タッチの79%、ハイタッチの31%。数字の意味を分母から確認します。
参考文献
Kogan L, et al. (2017). Animals, 7(10), 73. https://doi.org/10.3390/ani7100073