鼻タッチ79%、ハイタッチ31%をどう読む?
四行動の終了時最高点と、開始時からできた猫・評価分母を区別して読みます。

導入会話
マロン学長「鼻タッチは79%。それなら79匹が新しく覚えたんだね!」
いち教授「マロン、そこは一度止まろう。終了時にできた数と、訓練で新しくできるようになった数は違うよ。」
この回でわかること
- 終了時の最高点は四行動で27〜79%
- もともとできた猫を差し引かずに新規習得率とは呼べない
- 訓練前の評価人数は行動によって違う
最高点はどう決めた?
トレーナーは「鼻で指や棒に触れる」「一周する」「座る」「前足で手に触れる」を、それぞれ声と目で分かる合図で5回求めました。動画を見た評価者は0〜3点で採点し、3点は合図から2秒以内に完成形を示した場合としました。鼻を近づけても触れなければ2点など、惜しい動きも点数に含めています。
訓練後に3点だったのは、鼻タッチ79/100匹、回転60/100匹、座る27/100匹、ハイタッチ31/100匹でした。四行動の得点には訓練前後で統計的な差がありました。「猫は何も学べない」という決めつけには合わない結果です。しかし全行動で全猫が最高点になったわけでもありません。
開始時からできた猫がいる
鼻タッチは、訓練前の時点で48/100匹が最高点でした。訓練後の79匹を「新しく覚えた79匹」と呼ぶことはできません。鼻タッチでは43匹の点数が上がり、9匹が下がり、48匹は同じ点数でした。この変化も個々の前後スコアの話であり、全員が0点から3点になった意味ではありません。
回転は訓練前23/89匹が3点、座るは7/73匹、ハイタッチは0/86匹でした。訓練前に怖がったり位置が合わなかったりした猫は、ある行動を評価できなかったため、最初の分母が100ではありません。最後は四行動とも100匹です。分母が違う割合を、そのまま同じ100匹の前後変化と読まないことが大切です。
四つの行動の結果を並べると、ターゲットは訓練前後とも100匹を評価でき、43匹で得点が上がり、9匹で下がり、48匹は変わりませんでした。回転は訓練前に評価できた89匹のうち58.4%が上がり、3点は25.8%から60%へ。座るは73匹のうち41.1%が上がり、3点は9.6%から27%へ。ハイタッチは86匹のうち50%が上がり、下がった猫はなく、3点は0%から31%になりました。年齢別・性別の改善幅に有意な差はありませんでした。
訓練前に評価できなかった猫がいるため、行動ごとに分母が違います。前後の割合の差を、同じ100匹の完全な対比較として読むことはできません。
「もう少し」の猫もいた
研究は3点を厳密に付けました。鼻が目標まで少し足りない、座る姿勢だが後部が床へ付かないなどは2点です。2点と3点を合わせると、訓練後は鼻タッチ95%、回転76%、座る59%、ハイタッチ38%でした。これは完成率を大きく見せるための数字ではなく、途中まで示した猫もいたという補足です。何点を「できた」と呼ぶかで印象が変わります。
一方、事前評価ができなかった猫や途中でプログラムを終えられなかった19匹の存在を消してはいけません。結果は、完了した100匹の、この四課題での短期的な成績です。
今日からできること
- 研究の「何%」を見るとき、終了時の達成か、新規習得かを区別する。
- 自分の猫が完成形を示さなくても、近づく・向きを変えるなど途中の行動を観察し、無理に繰り返さない。
まとめ会話
マロン学長「79%は最後に鼻タッチができた割合。最初からできた猫もいたんだね。」
いち教授「うん。次は、食べ物への関心や怖がり方で結果がどう違ったか見よう。」
次回予告
食べ物を選ばない猫や、ケージを出たくない猫の結果を確認します。
参考文献
Kogan L, et al. (2017). Animals, 7(10), 73. https://doi.org/10.3390/ani7100073